学長メッセージ

学長 原田 宗彦

 京都教育大学は、隣接する藤森神社へと連なる豊かな自然環境に包まれた、歴史と伝統を礎とする教員養成大学です。その起源は明治9年(1876年)創立の京都府師範学校にさかのぼります。以来、時代の要請に応じた変革を重ね、昭和24年(1949年)に京都学芸大学として新たな歩みを開始し、昭和41年(1966年)に現在の京都教育大学へと発展しました。2026年には、創基150周年という節目を迎え、本学は新たな転換点に立っています。

 これまで本学は、常に社会の変化を見据え、質の高い教員の育成に取り組んできました。しかしその一方で、少子高齢化の進行や社会構造の多様化、さらにはデジタル化の急速な進展により、教育に求められる役割は大きく変容しています。本学では、そのような現代的な課題に向けて、最先端の学術的知見を踏まえつつ、それを実際の教育現場で活用できる実践力と、しなやかな感性を持つ教員の養成を目指しています。

 本学の教育体制は、いくつかの特色を有しています。第一に、入学時から専門分野に所属し、初年次より高度な専門教育を受けられる点です。第二に、多様な校種の教員免許取得に対応した柔軟なカリキュラムを整備している点です。さらに、1回生から4回生まで段階的に実施される体系的な実地教育により、理論と実践の往還を重視した学びを実現しています。教育実習はすべて附属学校園で行われるほか、公立学校でのインターンシップや学校ボランティアを通じて、教育者としての資質を磨いていきます。

 今日の学校現場では、不登校やいじめといった課題に加え、インクルーシブ教育の推進、外国にルーツをもつ子どもへの日本語支援、さらにはICT活用や生成AIの導入といった新たな課題が顕在化しています。本学では、これらに対応するため、「教育課題対応科目」を設置し、理論と実践の両面から学ぶ機会を提供しています。また、本学を基幹大学とし、京都の7大学および京都府・市教育委員会と連携する連合教職実践研究科は、日本初の連合教職大学院であり、多様な知見を結集し、高度専門職としての教員養成を推進しています。さらに令和4年度には「学びサポート室」を開設し、特別な支援を必要とする幼児児童生徒への対応に関する実践的知見の蓄積と普及を進めています。附属学校園や地域の教育機関、教育委員会と連携しながら、インクルーシブな学びの環境づくりに貢献しています。また昨年度は、インクルーシブ教育に関する理解を深めるため、海外より著名な研究者を招き国際シンポジウムを開催しました。

 これからの教育に求められるのは、単なる知識や技能の伝達ではなく、子ども一人ひとりの多様性を理解し、その可能性を引き出す力です。本学は、専門性に裏打ちされた指導力に加え、デジタル時代にふさわしい柔軟な思考力と倫理観、そして子どもの成長に寄り添う豊かな人間性としなやかな感性を備えた教員の育成を重視しています。歴史あるキャンパスと緑豊かな学びの環境のもとで、自らを磨き、次代の教育を担う専門職としての力を身につけて欲しいと願っています。

令和8年4月