美術教育研究室

 人が生まれてから義務教育課程を終えた後も、生涯に渡って美術(表現・鑑賞)と豊かな関係を育み続けられるような美術教育の在り方を探っています。子ども達の表現の発生や展開の場面で起きる出来事や、学校で行われる美術教育の諸課題と向き合い、生き生きした場面づくりへの手立てを考えていきます。また、長く視覚芸術と考えられてきた美術の世界に、視覚障がいがある人々と共に挑戦する活動や研究も行いながら、これからの美術教育や美術の世界を切り拓くための新しい種子を育てています。
 子ども達が、学齢期を過ぎてからも美術の世界と力強い繋がりを保ち続けることができるかどうかは、周囲のおとなが抱く「人間」と「美術」についての意識がどこまで開かれているかにかかっています。学生の皆さんも、美術を通して人に伝えたいことは何か、自らの内なる土壌を柔らかく肥やし続けてください。

日野陽子

絵画研究室

 絵画研究室は、制作者にとっていま、そのときに必要な表現をみつけるために制作を積み重ねる場所です。与えられた課題ではなく、自身にとって強く興味惹かれることに没頭できる場所です。
 そのため、「絵画」という言葉を冠してはいますが、さらに広い分野へと表現方法を繋げて研究することも可能です。それが平面の形をしているのか、立体表現になっていくのか、デジタルの仕事になるのか、限りない可能性から自ら選択して決定することによって、いまだからこそ実現することのできる何かをつかみ取ってほしいと思います。
 また、スペースを他者と共有して制作することは学生時代の大きな醍醐味です。ときには我慢を強いられることもあるでしょう。互いに譲歩したり、協力したりするうちに、はじめて見えてくる「自身の姿」や「他者の表現」を、面白がることのできる制作者であってほしいと願っています。

西薗 静

彫塑研究室

 彫刻の魅力は空間の中にいろいろな素材を使って立体表現できることです。 京都教育大学の彫刻研究室は3回生から学生がお互いに刺激し合いながら彫刻の制作に励み、専門を深めていきます。 研究室の人数は10名ぐらいなのでアットホームな雰囲気で学生生活を楽しんでいます。 この研究室では人体制作を中心に生命感ある人間像等の表現を追求していくことを一つの伝統としています。 また木・テラコッタ紙・セメント・石膏・樹脂等の素材を使い個性的な作品づくりも行います。 制作することで彫刻の技法や素材研究を深めると共に優れた造形感覚の習得を目指しています。

デザイン研究室

 デザインにおいて機能や美しさなどを目標とした場合、その目標に向かってゆく過程が存在します。 そしてデザインを進めてゆく過程には必ず<方法>があり、その<方法>を決定するのは<意識>です。 その<意識>と<方法>は自己と作品との<掛け橋>として、また作品と他者を結ぶ<掛け橋>として存在する二重性を持っています。 すなわち<意識>によって決定された<方法>の橋を掛けるか、掛けないかでデザインの出来、不出来が決まります。
 以上が私の考えるデザインを指導する核となる部分です。こうしたデザインの核を鍛錬することで生命力のある作品を制作することが可能になります。 デザインは現在生きて活動している社会の中にあってこそ意義を持つものであり、それだけに社会の変化に応じて時代と共に需要も変わっていきます。 現在グラフィック・デザインの領域は印刷手段に限らず、映像、商空間や環境、都市や街を形成するデザイン計画など、ますます拡大していきます。 こうした中でいかに自己から作品、作品から他者への橋を掛けることができるかどうかが今後のデザインに厳しく問われていくことでしょう。

安江 勉

工芸研究室

 工芸では陶芸の専任教員による授業を中心に、「ものづくり」について基礎から発展的な制作活動まで、腰を据えて段階的に学ぶことができるように設備とカリキュラム設けています。 素材や技法、理論に触れながら、総合的な「ものづくり」について探求していくことを目指します。 また、充実した木工・金工設備があるのも特徴の一つです。
 工芸制作は、工程ごとの作業性が高く、また用途や素材・技法などの制約があるため、絵画や彫刻のように行為が直接的に表現につながるものではありません。 しかし、素材と格闘し、炎や泥にまみれて制作を行う緊張感や、完成した時の充実感は、なにものにも代えがたい感動があります。
 各々の主体的な作品制作だけでなく、大学のイベントや付属学校の子供たちとのワークショップ、さらには公共の場での作品展開など、「ものづくり」通した活動の場をさらに充実したものにしていきたいと考えています。

丹下裕史

美学・美術史研究室

 この研究室は作品を見ること、あるいは読むことを通じて、作品そのものと、作品の背景にあるさまざまな事象について考えています。
 作品といっても、その対象は絵画や彫刻といった伝統的なものから、映画、アニメ、漫画まで、多岐にわたります。
 理論と実践を往還することでしか、料理を作ることも、仕事をすることもできません。具体性を欠いては思考することはできませんし、思考を欠いては実践もまたありえないのです。これこそが、実技をしたい人がたくさん集まっているはずの美術領域にこんな研究室がある意味なのです。
 ともかく、時間と場所を湯水のように浪費して(羨ましい)彼ら、彼女らが自由に制作したり考えたりするのがこの研究室です。
 そうしなければわからないことがあって、それこそが大学の、あるいは学生の本質なのです。

山内朋樹

書道研究室

 文字を書く行為は、たとえ伝達を主目的としていても、書き手の個性が自然に表れます。特に毛筆という道具は、その個性をより鮮明に映し出します。また、書かれた文字に美しさを見出し、自らの文字にも美しさを込めようとすることは、自然な心の発露だといえるでしょう。本学では、このような考えに基づき、書教育を芸術教育の一環として位置づけ、美術領域の中に組み込んでいます。
 書道研究室は、1回生から大学院生までが同じ空間で自由に制作に取り組める場です。学年を超えた交流や少人数制ならではのきめ細やかな指導を通じて、作品制作のスキルを高め、先輩から後輩へと研究室の伝統や精神を受け継いでいます。そして、書作・書学・書教育の各分野を幅広く学び、伝統に根ざした書法を習得するとともに現代における書の役割や表現のあり方を探究しています。
 ここ京都は数多くの歴史的な劇跡が生まれた地です。風情ある街並みの中にも多くの名筆が残されており、書を学ぶ者にとって理想的な環境といえます。この研究室での学びが、学生一人ひとりの創造性を開花させ、次世代の書写書道教育を担う人材として羽ばたくための糧となることを期待しています。

舟引遥香