子どもの学ぶ意欲や知的好奇心を育て、「確かな学力」を育成することは、学校教育の基本的な役割です。

現在は、基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着すること、知識・技能を実際に活用する力を育成すること、さらに実際に課題を探究する活動を行うことで、自ら学び自ら考える力を高めることが求められています。

近年、学習意欲の向上や学習習慣の確立が課題とされる中で、ますます個に応じたきめ細やかな指導が必要とされています。そのためには、実践に対する省察を行い、常に授業の改善を図る「学び続け成長し続ける教員」が求められます。

本コースでは、魅力あるカリキュラム編成が可能なマネジメント能力を育成するとともに、教授理論や授業分析、教育評価、現代的教育課題及び教育方法学の理論的背景への認識を深める科目を用意し、理論と実践を併せもった高度な授業力を育成することをねらいとしています。

本コースを修了することにより、学部新卒院生は学部時代に身につけた基礎的な力量に加えて、さらなる実践的指導力・展開力を備え、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員としての力量を、現職教員院生は高度な授業力を身につけることにより、地域や学校において指導的な教員としての力量を身につけることができます。

本コースは、京都教育大学、京都女子大学、京都橘大学、同志社大学の多彩な研究者教員及び教育実践に精通した実務家教員が担当します。

授業コミュニケーション論
授業研究の理論と実践
現代的教育課題の教材化と授業実践
授業力高度化演習
授業力高度化実践研究Ⅰ
授業力高度化実践研究Ⅱ

  • 口野 隆史

    くちの たかし

    京都橘大学・教授

    京都橘大学より派遣。大学教員として35年目となり、専門領域は体育科教育学、幼児体育。基本的な研究テーマは「体育授業における子どもの“つまずき(運動がうまくならない状況)”を消極的・否定的に捉えるのではなく、成長や発達の機縁に変えていきたい」というものである。そのために、運動学習の際の子どもたちの外面的な『できる』様子(タイム、距離、回数)ばかりでなく、それに関わる『わかる(認識面)』にも着目して子どもたちのその様子を捉えたいと考えている。子どもたちは本当に体育の授業で、「上手になるように」「わかる・できるように」指導されているのだろうか。ひょっとすると「下手になるように」指導されたりしていないだろうか。私自身の授業も含めて、みなさんと一緒にこんなことを考えていきたいと思う。
     著書に『みんなが輝く体育① 幼児期 運動あそびの進め方』(編著代表、創文企画)、『教師と子どもが創る体育・健康教育の教育課程試案 第1巻 -すべての子どもに豊かな運動文化と生きる力を-』(共著、創文企画)など。

  • 佐々木 真理

    ささき なおまさ

    京都教育大学・准教授

    教育工学・情報教育分野を主たる対象領域にしている。教授・学習過程における教育方法・授業技術の改善において、教育工学的アプローチを適用した研究方法を用いて実践的な研究を進めている。内容は、マルチメディアやインターネット、ビデオ会議システムなどの情報メディアと、従来の黒板・印刷教材、OHP・ビデオなど視聴覚メディアとの、有機的な統合を図った教育方法の改善や授業分析、教材の開発ならびに評価の手法について取り組んでいる。また、教授・学習コミュニケーションの改善のための表現技法、プレゼンテーション技法、情報教育の在り方についても研究・指導している。

  • 田中 曜次

    たなか ようじ

    同志社大学・准教授

    同志社大学より派遣。京都府の公立中学校、京都教育大学附属桃山中学校に約20年間勤務。この間、「社会科教育」「帰国・外国人生徒教育」「国際理解教育」などの分野で「ディベート」や「ロールプレイ」を取り入れた実践研究を行った。その後、京都学園大学で教職課程を担当した。
     現在は社会科を中心に、「授業づくり」や「教材開発」などに取り組んでいる。近年、「評価」や「アクティブラーニング」など様々な課題が学校現場を悩ましている。このような課題を1つでも多く解決できるような授業やカリキュラムを提案できるようにしたいと考えている。フィールドワークを重ね、多くの授業を分析して、その「良さ」がどこにあるのかを多くの人にわかりやすく伝えることを目標としている。

  • 谷川 至孝

    たにがわ よしたか

    京都女子大学・教授

    専門は教育行政学。長年英国をフィールドとして研究を進めてきたが、英国での知見を活かして我が国を対象とした研究に軸足を移しつつある。
     近年は「教育と福祉の連携」をテーマにしている。「教育と福祉の連携」の基本的な課題意識について次のとおり述べてきた。授業は学校の根幹となる本務の一つである。ところが、子どもの貧困、虐待、特別支援、不登校、等々、今日授業にまでたどり着けない子どもたちが少なからずいる。教育と福祉を連携させ、子どもとその家庭を丸ごと支援することにより、そのような子どもたちの教室の外での障害を取り除き、教室へと導く。そしてすべての子どもたちのウェルビーイングを保障する。
     2021年度から教職大学院で仕事をさせていただくこととなった。そして新たな気づきを得ている。マイノリティの子どもたちがなんとか教室にたどり着けても、その教室の中の日常やそして授業がその子どもたちのウェルビーイングを保障するものでなければ、再び子どもたちは教室から逃亡する(排除される)。今はそのような視点で、教室の中や「授業力高度化」を考えてみたいと思っている。

  • 徳永 俊太

    とくなが しゅんた

    京都教育大学・准教授
    授業力高度化コース主任

    専門領域は教育方法学である。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)で習得したイタリア語をいかし、イタリアの歴史教育について、授業論、カリキュラム論の観点から研究をしてきた。大学院生時代は京都市の小学校と大学院研究室との共同研究に参加し、算数、社会科、特別支援などの教科研究にも携わった。現在は生涯学習先進国であるイタリアの事例を参考にしながら、生涯学習社会における学校教育の役割について考察する研究に着手したところである。
     主な著書に『イタリアの歴史教育理論 -歴史教育と歴史学を結ぶ「探究」-』(法律文化社、2014)がある。

  • 冨永 吉喜

    とみなが よしき

    京都教育大学・教授

    京都府立学校の国語科教員として32年間学校教育に携わった。主に高等学校に勤務し、学級担任として自主活動の活性化に取り組んだり、教務部長として教育課程の編成、総合的な学習の時間の立案、学校運営全般に携わったりした。1993年度には京都府から中国陝西省立西安外国語大学に日本語教師として派遣され、1年間日本語教育に携わった。京都府教育委員会の指導主事として教育行政にも関わり、小・中・高連携や人権教育を担当し、高校に限らず様々な校種の先生方の指導に当たった。
     また、管理職としては、全日制・定時制・通信制の三課程を併置する高校や特別支援学校の校長を務め、多様な幼児児童生徒と接してきた。
     このような経験を踏まえつつ、教職を目指す学生の方々とともにこれからの教師の在り方や学校の在り方について探っていきたい。

  • 西 祐子

    にし ゆうこ

    京都教育大学・准教授

    京都府教育委員会より派遣。京都府の公立小学校教員として27年間勤務。学校では、学級担任、少人数指導担当教員、教務主任、教頭として勤めた。担任、加配時代は学力向上に資するための教育を実践し、中でも算数科指導において、どの子も「わかる・できる・身につく」授業の実現に向け、研究を進めてきた。また、教育行政にも関わり、社会教育主事兼指導主事として、PTAをはじめ社会人対象の研修会を開催したり、学校教育との連携について探ったりする中、社会総がかりで子どもをはぐくむ意義について考える機会に恵まれた。独立行政法人教員研修センター主任指導主事としては学校の中核を担う教職員への研修に携わり、全国各地の熱い思いをもつ教員たちの意気に触れ、教員としてあり続けることのすばらしさ、学校教育の重要性について再認識することができた。
     このような経験を生かし、教員としての専門性や確かな指導力の向上だけでなく、広い視野から豊かに人や社会とつながり、自らも目標をもって学び続ける人材の育成に努めたい。

  • 林 明宏

    はやし あきひろ

    京都教育大学・教授

    京都市立小学校教員として37年間、校長として11年間、常に現場主義で教育の果たす役割と、その使命を求め教育実践を重ね続け,“No child left behind.”(一人一人を徹底的に大切にする)の理念の下、教職員、教育機関,保護者や地域と連携して教育課題解決のために同僚性と凝集性を培い尽力してきた。
     社会の急激な変化の中、次世代を担う教員に、授業力を中核に据えた実践的指導力は勿論のこと、創造性豊かな人間力の育成が急務である。学びに向かう姿勢に意味と価値を見出してこそ、「教師魂」が根付いていくと考える。理論と実践を融合させた指導を展開していくことで、志の高い矜持と覚悟を持った人間的魅力に溢れる教師を育みたい。そして,現場において困難な状況にもかかわらず、しなやかに対応できるレジリエンスをもった学び続ける教師を育成していきたい。

  • 日比 淳子

    ひび じゅんこ

    京都教育大学・准教授
    京都市教育委員会

    京都市教育委員会より派遣。京都市立小学校教諭として,17年間学校教育に携わる。学級担任として,一人一人の個に応じた学級経営,授業力向上の充実に努めるとともに,教務主任として管理職を補佐し,学校運営に携わった。また,京都市総合教育センターの委嘱を受け,音楽科研修推進員,音楽科研修指導員として,音楽科の研究の充実,後進の育成を推進する役割を担う。その後,同センターに勤務。研究課研究員として,小学校音楽科における主体的・創造的に取り組む子どもの育成を目指して,鑑賞と音楽づくりを関連付けた学習について研究し,論文にまとめた。現在は京都市総合教育センター教員養成支援室指導主事として,主に教師を目指す学生・社会人の指導を担当している。

  • 福嶋 祐貴

    ふくしま ゆうき

    京都教育大学・講師

    専門領域は教育方法学である。これまで、国内外の協働的な学習に関する理論および実践(協同学習、協調学習、学習集団など)について、学説史的なアプローチによって研究を進めてきた。また大学院生時代以来、京都市や岩手県において、学校の先生方や地域の方々とともに、パフォーマンス評価やルーブリック、ポートフォリオの活用に関する共同研究を行ってきた。こうした業績をもとに現在、教科等において協働的な学習の指導と評価をいかにデザインするかという問題について、理論的・実践的に研究に取り組んでいる。
     主な著書に『米国における協働的な学習の理論的・実践的系譜』(東信堂、2021)がある。

院生(2年次生) 上原 志穂

授業力高度化コースでは、教科や校種の違う仲間と共により良い授業について考えます。また、同じコースの仲間だけでなく、生徒指導力高度化コースや学校経営力高度化コースの院生とも交流することで、幅広い視点を持つこともでき、学部ではできなかった学びができている実感があります。
 元々、授業力を中心に伸ばすためこのコースに進学を決めました。しかし、このような2年間を通して、視野が広がり、授業力と生徒指導力は決して切り離せるものではないことを学びました。そして、どちらも兼ね備え初めて「指導」のスタート地点に立てることが分かりました。今は、授業力、生徒指導力どちらも向上させられるよう、学びを深めています。
 教職大学院での学びを、今後の教師生活に活かし、目の前の子どもにより適切な「指導」ができるよう今後も学び続けたいと思っています。

第八期修了生 井上 晃一
(京都府公立中学校勤務)

授業力高度化コースへ入学して、省察的実践者としての土台を身につけました。講義では、良い授業を行うための理論を学び、実践力を身につけるための模擬授業を行います。そこで、様々な校種・教科の先生方とともにより良い授業を作り上げるための意見を議論しました。多角的な意見を交わすことによって、自分の授業の改善点を見つけていきました。
 専門実習では講義で学んだ理論(私の場合は、理科における素朴概念を科学的概念へ変化させるための学習過程を研究しました)を実践とつなぎ合わせます。生徒たちに合った授業を作り上げるために省察を行って授業を作っていきました。
 現場に立った今でも、大学院で培った授業への思いを大切にして授業を改善するための省察を繰り返し行っています。私の教員としての礎を作った2年間の学びでした。

第六期修了生 中嶋 和彦
(京都市公立中学校勤務)

「なぜ学ぶのか」
 この問いが、大学院生活を通して得られた最も大きなものでした。
 大学院に入るまでは、学校に来ること、授業を受けることなどいろんなことを当たり前のものとして考え、勉強してきました。しかし、大学院での講義や専門実習を通すことで、改めて、その問いの重要さに気付かされました。
 現場に入った今でも、その問いの解を導きだすため、教科教育、学級経営など日々の学校教育に携わっています。

第五期修了生 香月 美南
(京都府公立小学校勤務)

「なぜだろう?」と考える楽しさや「わかった!」という喜びを子どもたちに伝えられる授業ができるようになりたいと思い、授業力高度化コースへ進学しました。
 教育実習で、同じ指導案をもとに授業を行っても発問の仕方一つ違えば児童の反応が変わることを経験し、「良い発問とは何か」をテーマに大学院で学びを深めました。専門実習では、教育実習で感じた自己の課題を意識して子どもと関わったり、研究テーマに合わせた授業を行ったりすることができました。授業をした後には、実習生同士や指導教諭と共に省察を行い、授業分析の力をつけたり、自己の課題を改善したりすることができました。フィールドワークでは、様々な学校へ行き、授業を見ることができました。授業の工夫や子どもの発言に対する返し方など、講義では学べないことを多く学ぶことができました。
 教職大学院で学んだことを学校現場で活かし、これからも学び続ける教員でありたいと思います。

第四期修了生 内田 千晶
(京都府公立小学校勤務)

私は現在京都府公立小学校で担任として勤務しています。毎日忙しく、仕事に追われる日々ですが、大学院で学んだことが大きな財産となっています。
 講義で学んだ理論と専門実習での実践経験は、現場で物事を客観的に考えられる視点となっています。
 また、教職員間のチームワークが欠かせない職場であるなかで、演習で多く取り入れられていたグループワークで身につけた協働性が活きています。
 日々勉強の毎日ですが、子どもたちを大切に、学び続ける教師であり続けたいと思っています。

第三期修了生 北野 達也
(京都府公立小学校勤務)

勤務開始から早いことにもう1年が経ちました。
 毎日がとても忙しく、日々の授業に追われる生活ではありますが、その中でも 指導と評価の一体化や、どうすれば子どもたちに分かりやすく伝えられるのか、 この時間のねらうところは何なのかなど、全ての下地には大学院での学びがあった ように感じています。
 また、合計50日の実習の中でも、2年次の時の実習Ⅱは4月のクラス開きから 学ばせていただいたので、クラス作りというものをすぐ隣で学ぶことができ、さらに 年度初めの準備もどういうものなのかを学ばせていただいたことで初任の時にも慌てすぎずに対応できました。
 何より、学生(院生)という立場で2年間学ばせていただいたことは、教師を目指す 仲間達との交流の中で自己を成長させ、熟成させる良い時間であったと思っています。
 人間味あふれる「人間教師」であり子ども達に「つつみこまれている感覚」を 持たせられる教師を目指して頑張っていきたいと思います。

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