教職大学院のカリキュラムの特色のひとつに「教職専門実習」(10単位・50日間)があります。講義による学びと学校現場での学びを往還させ、理論と実践の融合をめざす新しい教育を生み出す重要な科目がこの教職専門実習です。

教職大学院が創設された目的に「実践的指導力」のある教員の養成があります。本研究科では、実践的指導力とは実務能力に優れているということだけではなく、多様で複雑な教育課題のある中、子ども、保護者、教職員等との信頼関係を築きながら、これらの課題に的確、柔軟に対応しつつ、創造的に教育実践を担っていける力であると考えています。それには、理論知を実践の中で読み解く力、実践の中から普遍的な知見を練り上げる力が必要です。この力を育てることが10単位(50日間)の実習での重要な目的です。

また、現職教員院生については、「教職専門実習」10単位の履修について、「課題レポート」等の審査の結果、教職経験等に応じて、この単位を履修したものとみなす制度があります。

なお、履修したとみなす単位数は入学後の審査によって決定されます。

共通必修科目は、教職コア科目としての5領域10科目20単位の履修により、教職の専門性を体系的・総合的に学ぶことを目的としています。基本的には1年次に履修します。

大学講義で理論的アプローチを学び、学校へ出向いてのフィールドワークや事例研究を行い、そして大学での分析・省察を通じて知見を整理し理論を再構築するという学びの過程が共通科目群や各授業に組み込まれている点が、理論と実践の架橋をめざした教職大学院での新しい学びの特色です。

各領域を専門とする研究者教員と教育実践に精通した実務家教員とがペアとなって担当することを基本としています。

本研究科では5領域10科目について、次のような方針で科目を設置しクラス等を編成しています。

第1から3領域については各科目を「基礎理論」と「実践演習」の2群に分け、前期に講義で理論的なアプローチを学び、後期に事例研究やフィールドワークを通じた具体的、実践的な学びを展開するという構成を基本としています。基礎理論は1クラス編成で、3コースの院生が学部新卒や現職教員の区別なく共に学びます。実践演習は3クラス編成で20人程度の少人数のクラス編成が基本です。学部新卒院生と現職教員院生の混成クラスのものと別編成のものとがあります。

第4領域の「学級経営・学校経営」については「学部新卒院生」と「現職教員等院生」とでクラス編成を行い、院生のレディネスとニーズに即した目標と内容の授業としています。

第5領域の「学校教育」に関する科目は、「3コース別編成と合同クラス」を組み合わせた授業形態で、「教員在の在り方」に関する科目は、1クラス編成となります。

領域 共通必修科目名 概要(フィールドワークをFWと表す)
教育課程の編成・実施に関する領域 カリキュラム概論 学習科学の知見を認知科学と社会文化的研究の成果から概観する。カリキュラム編成の基本原理を理解し、カリキュラム開発上の課題を考察する。授業評価を含むカリキュラム評価とマネジメントの意義と方法を理解する。
カリキュラムの開発と実践 「カリキュラム概論」を踏まえ各教科の単元計画が構想できる力量の形成を図る。現代的テーマのカリキュラム開発と運営の実際を先進的な小中学校でのFWを通して実践的に学ぶ。現職教員クラスはカリキュラムマネジメントに焦点をあてる。
教科等の実践的な指導方法に関する領域 教科指導の理論と課題 授業の基本構造を理解し、目標を明確にした授業計画を構築する力量を形成する。学習活動のあり方について、事例研究を通して的確な授業形態の編成・運用能力を身に付ける。学習活動でのICT機器の活用の基本を理解し、授業実践に生かす。
教科指導実践演習 「教科指導の理論と課題」と連携しつつ、授業の指導計画と学習指導案づくりを行い,模擬授業を実施し自己の課題を明らかにする。FWの実施を通じて課題改善の方策を考察し、再度の模擬授業により教科指導力の向上を図る。
生徒指導・教育相談に関する領域 生徒指導の理論と実践 広義の生徒指導について、その基本的な考え方、個人・集団指導、学級・学年・学校経営、授業との関連、学校内外の連携、ケース会議の進め方、保護者への対応や今日的な生徒指導上の具体的課題等を、教育学や心理学の知見をベースに学ぶ。
生徒指導実践演習 「教科指導の理論と課題」と連携しつつ、授業の指導計画と学習指導案づくりを行い,模擬授業を実施し自己の課題を明らかにする。FWの実施を通じて課題改善の方策を考察し、再度の模擬授業により教科指導力の向上を図る。
学級経営・学校経営に関する領域 学級経営の実践と課題 学級経営の意義と学級集団づくりの基本的事項を演習課題を基に理解する。FWでの具体的な学級の観察と聞き取り調査を通じて、それらを総合的に把握する。現職教員院生のFWは若手教員の学級経営力を高める指導の在り方に焦点をあてる。
学校づくりと学校経営 教員の諸活動が組織活動として営まれ、様々な経営行動によって支えられていることを理解するとともに、組織成員としての意識を高め、協働する組織行動能力の形成を図る。
学校教育と教員の在り方に関する領域 現代社会と学校教育 多種多様な問題を生み出し、その解決の道筋が不透明になっている今日の学校教育の在り方について、公教育・学校教育の本質的な認識や社会変化によるその転換課題という視点から、テーマを設定し、討論を通じて具体的に検討する。
教員の職務と役割 公教育制度における教員の職務と役割について、その法制度に関する理解を深め、専門職としての教員の社会的責任、法的責任について考察する。

コース必修科目は、共通必修科目での学修を基盤として、授業力、生徒指導力、学校経営力の各高度化コースが目標とする資質能力を育成する上で中核となる専門科目群です。各コースに6科目12単位が開設されています。

授業力高度化コースと生徒指導力高度化コースの科目は、フィールドワークや事例研究、模擬演習など理論と実践の架橋を図る内容となっており、研究者教員と実務家教員のティームティーチングで授業が行われます。学校経営力高度化コースでは、学校経営を巡る今日的な課題を取り上げ、多様な観点から考察し、実践的な経営力量の向上を図る内容となっています。

授業力高度化コースと生徒指導力高度化コースには、高度化実践研究I(1年次・通年・2単位)・II(2年次・後期・2単位)が、学校経営力高度化コースには高度化実践研究(修了年次・通年・2単位)が設置されています。これら実践研究は研究者教員によるゼミ指導で、修了論文の作成に向けての指導が行われます。

選択科目は、各コースの専門分野における個々の課題意識をさらに深め、幅広い学識と高い実践力を身に付けるための科目です。

本大学院の専任教員の他、京都教育大学大学院教育学研究科の教員が開講する多彩な選択科目群の中から、個々の院生が専門性を高めるものを適切に選択して、2科目4単位を履修します。履修にあたっては、担任教員がガイダンスを行います。

「問い」から考える教育学
教育実践記録の国際比較
教育評価について考える
教育評価実践論
社会認識を培う授業の実践
開発途上国の子どもと教育
平和教育論
量的アプローチ授業分析研究
情報機器操作法
現代社会と子どもの育ち
幼小接続について考える
学校心理学総論
学びと動機づけの理論と実践
認知発達と教育的支援
学校カウンセリングの理論と実際
人格理解のための理論と臨床技法
問題行動改善のための事例研究
学級づくりの歴史と現在
人権教育の課題と模索
人権に基づく性の学習
学校という組織を考える
教員の意識と組織行動
教師教育について考える
スクールアイデンティティの形成と教員の役割
学校の魅力化と地域との連携
教育行政・学校経営改善実践演習
学校事務と学校財務
授業力熟達の理論と実践
地球・生命・環境と人間
現代の学校と共生教育
小学校英語実践演習
保育の専門性について考える

京都連合教職大学院では、京都教育大学大学院教育学研究科で開講されている小学校、中学校や高等学校の教科に関する科目、特別支援学校等に関する科目を受講することができます。これにより、各自の問題意識や課題に応じて、教科の専門性をさらに伸ばすことができます。

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