「学校の自律性確立」、これが今日の教育改革において大きな課題とされています。それは個々の学校がその権限と責任を明確にし、保護者や地域から信頼される体制を確立することを必要としていますが、そのためには学校の組織マネジメントを担うスクールリーダーが重要な役割を果たしていかなければなりません。したがって、これからの学校組織の中核となり、リーダーシップを発揮する教職員の育成が重要な課題となっています。とりわけ、教職員の若返りが進んでいる今日の状況において、ミドル層の育成が喫緊の課題と言えるでしょう。

本コースでは、今日の学校に求められる教育課題や社会の中における学校の役割について的確に理解することにより、学校の進むべき方向に関するビジョンを自ら構築し、その実現に向けた経営活動を担うことができるスクールリーダーを育成することを目的としています。また本コースが対象とするスクールリーダーは、教育職員にとどまらず、学校の組織マネジメントを担う重要な職員として学校事務職員や教育委員会事務局職員といった行政職員も含めて考えており、その育成も目的としています。教育職員と行政職員とが共に学ぶことにより、両者の協働が促進され、学校の組織マネジメントがいっそう充実していくものと考えています。

こうした目的を達成するために、本コースでは、教育行政、学校経営に関わる授業科目を設定し、今日の教育課題との関連で、その本質を理解できるようにすると共に、事例研究、フィールドワークなどを積極的に行い、実地に即した学びを展開できるように工夫しています。実習科目も勤務校において学校経営力を高度化させる内容としています。

なお本コースは、京都教育大学、同志社女子大学、龍谷大学の教育行政、学校経営を専門とする研究者教員及び校長経験のある実務家教員が指導します。

教育改革と教育行政・学校経営
教育法規の適用と課題
学校づくりとリーダーシップ
学校組織改善の理論と手法
学校の危機管理
学校経営力高度化実践研究

  • 上山 義宏

    うえやま よしひろ

    京都教育大学・教授
    京都市教育委員会

    京都市教育委員会より派遣。京都市立中学校国語科教員として27年間教壇に立つ。その間、学年主任や研究主任、教務主任として教育実践を積み重ねる中、学校現場で求められる教師像が大きく変化していることへの強い課題意識を有した。その後、教頭、副校長、校長として9年間勤務し、京都教育大学大学院連合教職実践研究科(2011修了)で学んだ知見をもとに、チーム学校として機能するための組織づくり、特にスクールソーシャルワーカーをはじめとする外部リソースとの連携構築に関する実践・研究に力を注いできた。現在は、教科・学級指導等のあらゆる場面でのユニバーサルデザイン(以下UD)に基づいた教育実践とともに、UDの視点に立った学級・授業づくりを基盤とする「個の特性に応じた支援」を学校経営に組み込むためのシステム構築を研究課題としている。さらに、新学習指導要領での重要な視点である「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、すべての教職員が児童・生徒を指導する上で、授業導入時のめあて・見通しの確認や、終盤のまとめと振り返りを徹底し、学ぶ楽しさやわかる喜びを実感できる授業づくりをおこなうことを目指している。今後、超スマート社会とも言われる「Society5.0」では社会の在り方そのものが劇的に変わることが示唆されている。そうした時代において、私たち教員も今まで以上に「変化し続ける」ことが求められる。つまり「学び続ける力」を身につけることこそが、これからの教員に必要不可欠な資質・能力であり、そのための支援を学生の方々におこなっていきたいと考えている。

  • 滋野 哲秀

    しげの てつひで

    龍谷大学・教授
    学校経営力高度化コース主任

    専門領域は学校経営と教師論。研究テーマは、魅力ある学校のカリキュラムデザイン、高校のブランディング、組織とリーダーシップ、ミドルリーダーと教員の同僚性、専門家としての教員の成長と校内研修、授業研究である。特に、急速に増加する若手教員をどう育成するかについて、大学における養成段階と学校の教職員集団とのかかわりや教育委員会との関係から検討していきたい。また、気象予報士の資格を生かし、気象災害・地震・火山災害を含めた防災教育のあり方や学校における安全管理体制についての事例研究も行っている。
     著書に「京 天と地と人」(共著 京都新聞出版、2015)、「高校教育のパラダイムシフト」(単著 龍谷教職ジャーナル、2014)などがある

  • 竺沙 知章

    ちくさ ともあき

    京都教育大学・教授
    研究科長

    教育行政、学校経営を専門としている。特に学校財政制度の研究を続けてきており、アメリカ合衆国における学校財政制度のあり方をめぐる議論や制度改革のあり方について研究を行っている。
     また日本における学校財政制度、とりわけ学校の組織運営を支える財務のあり方について、学校事務職員とともに研究を進めている。学校の自律性を確立し、教育の成果を高めるための組織化や運営のあり方について、財政面を中心に考えているところである。
     また教育面では、教育法規に関する理解を深めることに力を入れている。学校現場で起こる様々な法的問題にいかに向き合えばよいのか、事例に即して検討し、法的思考力を高めていくことを目指している。
     主な著書に『アメリカ学校財政制度の公正化』(単著:東信堂、2016)、『公教育経営の展開』(共著:東京書籍、2011)がある。

  • 水本 徳明

    みずもと のりあき

    同志社女子大学・教授
    副研究科長

    学校の組織と経営についての研究を専門としている。現代という時代と教育という営みが学校組織とその動きにどのような特徴をもたらすのかを理論的、経験的に明らかにしつつ、それを踏まえた学校経営の在り方について検討することを課題としている。最近は、教職員の思いや感情を聞き取る調査を通じてその課題に迫っている。学校経営の実践については、学校を共生の場として捉え、コミュニケーションづくりを通じた協働の構築のための理論とスキルの開発に取り組んできた。少人数学級、小中一貫教育、中高一貫教育、看護学校経営などについても、実践と研究両面で関わってきた。
     主な著書は次の通り。『共生と希望の教育学』(共著、筑波大学出版会)、『次代を拓くスクールリーダー(学校管理職の経営課題1)』(共著、ぎょうせい)、『システムとしての教育を探る』(共著、勁草書房)。

院生(1年次生) 上田 雅也
(京都市公立小学校勤務)

現在の教育現場では、以前にも増して様々な課題に向き合う必要性が出てきています。国として決められた教育の大きな流れへの対応をしながらも、教職員の働き方改革も求められています。
 しかしそんな中でも私たち教師が絶対に無くしてはいけない感覚は、どんな状況であっても目の前の子どもたちを誰一人取り残さずに健やかに育むということです。そのことを意識した教育改革であり、働き方改革でなければなりません。それを学校現場で確実に進めていくためには、そこで働く教職員一人一人の個性を活かしながら学校全体を視野に入れたリーダーシップが必要になります。
 この連合教職大学院では、教育行政や学校経営を専門とされている研究者教員の方々や校長経験のある実務家教員の方々のご指導のもと、様々な角度からの講義の中に事例研究やフィールドワークなども取り入れていただきながら、学校づくりに必要なことを有意義に学ぶことができています。コロナ禍のためにオンライン授業が多いことは残念な思いもありましたが、学校現場でもGIGAスクール構想が進められていることを考えると、これもまた今後必要な授業形態を体験できている貴重な時間ではないかと思います。大量の難しい資料や課題との闘いの日々ですが、現場を離れて俯瞰的に学校を捉え、自らの今までの教育実践を改めて省察しながら、今後の学校のあるべき姿を考える良いチャンスだと感じています。ここで出会えた現職教員やストレートマスターの皆さんと共に、令和の日本型教育をいかにして子どもたちのためのものにしていけるかを考え続けたいと思います。

第八期修了生 畠澤 啓太郎
(京都市公立小学校勤務)

がむしゃらに目の前の子どもたちと向き合い、走り続ける。それが、連合教職大学院で学ぶまでの、私の姿でした。大学院で学んだ1年間は、そのような日常から離れ、学校現場を俯瞰しながら、じっくりと「教育」や「学校」に向き合えた、貴重な1年間でした。
 最初は「戸惑い」の連続でした。同じ「教育」というフィールドに立ちながら、初めて耳にする言葉が飛び交い、今まで考えたこともなかったことを考える日々。しかし、一つ一つの「問い」と向き合い、背伸びをせずに学んでいこうと思うことにより、「戸惑い」は次第に「刺激」に変わりました。様々な本を読み、日々の授業での学びや論文作成から、「学校づくり」「学校組織」「教育法規」「学校財務」「危機管理」など、学校現場での実践だけでは学べない、多くのことを学ぶことができました。大学院での学びと、たくさんの先生方・院生仲間との繋がりをもとに、これからも学び続ける教師でありたいと思っています。

第八期修了生 椙山 直美
(京都教育大学勤務(京都府教育委員会から派遣))

今、目の前にいる子どもたちにとって自分ができることを精一杯やる、そのことが全てで当たり前、という教員生活を長年送ってきました。
 学校現場から一歩離れた所から俯瞰して、これまでの経験・関係・物事を見つめ直すこと。様々な地域、校種、経歴を持つ方々と共に、学校経営、学校組織、学校事務、教育法規など、様々な分野において深く学ぶ機会を得られたこと。学校現場のみでは得ることのできない大変貴重な経験ができた一年でした。「当たり前」を問い返し、視野を広げ、新たな基盤をつくる学びの場となったのです。修了後も、この教職大学院でのつながりによる研究会に参加すると、現場とは少し違う「知」の風が吹き込まれ、刺激を受けることを実感します。
 目の前に子どもがいないのが今の職ですが、京都府全ての子どもの未来や幸せに関わっている職です。よりよく職責が果たせるよう、今後も自らを高め、学び続けていきたいと強く思っています。

第七期修了生 上田 清乃
(京都市公立小学校勤務)

「せんせい、聞いて!」「先生、あのねー」元気な子どもたちの声に囲まれての日々。これが私にとって、大学卒業以来のごく当たり前の毎日でした。
 教職大学院の研修によって、このような日常を離れ、教壇に立っている私、職員室でPCに向かっている私を俯瞰する機会を得ることができ、それまで、学校運営の基本となる教育法規や教育行政、運営財務などをあまり考えずに教育活動に携わっていたことを気付かされることになりました。そして、教職員の専門職意識、学校における経営活動や組織改革の重要性、不登校・いじめなど生徒指導の諸問題、保護者・地域との連携、さらに学校づくりを推進するリーダーの統率力、指導力のあり方について学べたことは、私にとって大きな収穫でした。
 「せんせい、先生!」駆け寄ってくる子どもたち。この子らの将来のために、責任のもてる学校経営を目指して、大学院で学んだことを生かし、学び続ける教員でありたいと考えています。

第六期修了生 高橋 泰三
(京都府公立中学校勤務)

教員生活20年の節目に本コースで学んだ一年は、私にとってこれからの教員生活の新たな基盤となるものでした。教科指導や学級経営、教育課程管理に東奔西走していた学校現場を離れ、一学生として学ぶことに専念できました。実績と実力のある個性豊かな教授陣によって緻密に構成されたカリキュラムの中で「大学院知」に触れることができたのです。その中で、経験を積み重ね、様々な視点や知恵を持っていると考えていたことが、いかに小さいものであったかを思い知らされました。学校の利害関係者への実践的なアプローチに留まらず、リーガルマインドの精神、ストラテジックな思考、そして学校が自律して在ることについて、苦しくも楽しい学びの営みの中で新しい知見が生まれることを体感しました。この思考は一年で終わるものではありません。ミドルリーダーの皆さん、実践的な教員として成長する機会となり得る本コースでの学びをぜひ経験してほしいと思います。

第五期修了生 井上 猛
(京都市公立小学校勤務)

1年間の学びを終え、早2年が経ちました。今思い出しても夢のような1年間でした。20年以上日々走り続けてきた学校現場を離れ、教師としてではなく、一人の学生として過ごす大学院での生活は、自分自身の学びのためにだけエネルギーと時間を使える贅沢な1年間だったように今更ながら感じています。そして、学校経営力高度化コースでの学びは、これまでの自分自身の「実践知」を再認識すると共に「大学院知」を身につけるものとなりました。日々の授業、そのための準備、そして、修了論文の作成のために数知れない文献や資料と出会い、多くの著書を読み、アンケートやインタビューのためにたくさんの学校を訪れることができました。御指導頂いた教授と二人三脚で書き上げた論文は自分自身の宝物となり、「同僚性を基盤に置いた現場での教師の育ち」は自分自身の教育実践のテーマともなりました。「学び続ける教師」であるための意欲と方法を身につけられたことは私にとって大きな力となっています。是非、学校経営力高度化コースで自分自身を「ジャンプアップ」させてください。

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