より意欲的に探求しようとする子を育てる

〜小中協同学習を通して〜

京都教育大学附属桃山中学校  荒木 功  土田 弘幸
1.はじめに
 京都市南部の伏見区桃山には,京都教育大学附属の幼稚園・小学校・中学校が隣接して設置されている。このような「地の利」を活かして,年齢幅の大きな子どもたちの姿を日常的に目にし,子どもの成長を長いスパンで見ていこうとする構えが形成されてきた。平成13年度から桃山地区の附属幼・小・中三校園の連携研究は,子どもの側に立つ教育を構築するために「学びの環境」をいかにつくるか,自立と共生に向かう学習力をいかに育むか,目指す子ども像や教育観の共有を心掛けながら進めてきた。
 そのなかで,前回の研究(平成19・20年度)では「学びの生きる場づくり」の具体化を進め,公開研究発表会を持った。今回の研究(平成21・22年度)は,「活用力を高める教育プログラムの開発」というプロジェクトテーマのもと,『自らの考えを広げ,深める子−互いの考えの伝え合いを通して−』を研究主題にして,コミュニケーション力や表現力などの活用力を高めることを目的とした実践研究に取り組んでいる。本日は,前回の研究と今回の研究についての報告をさせていただく。

2.研究のねらい
(1)前回の研究
 協同学習する子どもたち(小学校6年2組40名,中学校3年選択理科16名の計56名)の中で,身のまわりの自然環境,特に生物(野鳥)に興味をもっている子どもが多いことから,それを起点として,WG(ワーキンググループ)の研究テーマを,「生き物の生活から観察眼を高め,より意欲的に探求しようとする子を育て る」に設定し,研究を進めた。教師は子どもた ちの目線に立って,彼らの興味・関心がわかな い課題設定では,何も意味がないと考え,実践 をスタートした。「より意欲的に探求しようとする子を育てる」ために最も大切なのは,「まず子どもありき」という発想で,彼らの学びたいという欲求(内容)に耳を傾けることである。そして,学ぶ場(経験させる場)の設定をすることである。そうすることで,子どもたちは意欲をもって探求しようとし,課題解決に向かえるのではないだろうか,その後,新しい課題に直面しても前向きに取り組めるのではないかと考えた。

(2)今回の研究
 ことば・言語活動の充実に着目して研究を進めるにあたり,まず新学習指導要領の学習会をWGのメンバーでおこない,その後研究内容の検討にはいった。この新学習指導要領で,「理科においては学校や生徒の実態に応じ,十分な観察や実験の時間,課題解決のために探究する時間などを設けるようにすること」としている。そこで,本WGでは,観察・実験の際に,さまざまな活動を意図的に取り入れ,言語活動の充実を焦点化したい。具体的には,仲間(実験グループや学級全体)と話し合う中で,問題を見いだし,観察・実験を計画したり,実施したりする学習活動,観察・実験の結果を分析し,解釈する学習活動,科学的な概念を使用して,考察したり,説明したりするなどの学習活動が充実するように研究を進めたいと考えた。そして,WGの研究テーマを「観察・実験を通して集団の中で,思考力・判断力・表現力を育てる −学級やグループでの話し合いに着目して−」に決定した。

3.研究の方法と内容
(1)前回の研究
 @小学校の実践
   ・鳥類の事前学習
 A中学校の実践
   ・校内のタンポポ調査
   ・校内の水中の微少な生物の調査
   ・校内における小動物,動物調査
 B小中協同学習(中3選・小6)
   ・校内野鳥調査
   ・森林総合研究所・樹木園での野鳥調査
   ・野鳥の巣を科学しよう                           【子どもたちの調査活動のようす】

(2)今回の研究
 @小学校での実践(小6)
  水溶液の性質
 A中学校の実践(中2)
   化学変化と分子・原子 (教材名 赤色酸化水銀の熱分解)
 B小中協同学習(中2選・小3)
  ア.単元名 じしゃくのふしぎをさぐろう
  イ.テーマ 中学生が,磁石について初めて学ぶ小学生に対して,磁石の不思議な現象やおもしろ実験を通して,磁石の性質を説明する。
  ウ.内容
 『磁石のつかない金属』
 『磁石の部分と磁力』
 『小さな磁石』
 『紙に磁石を入れると?』
 『磁石を自分でつくる』
 『磁石の色と磁力』
 ・中学生は,小学生に問いかけながら,段階的に現象を示す。
 ・中学生は,伝えたいことを言葉で言わず,小学生に発見させる。
 ・演示した現象を小学生に体験させる。
 ・ひとりの発見,気づきをグループ全員で共感し,学びを共有する。                                            【小学生全員への演示実験】


4.実践の成果と課題
(1)成果
 @学び直しの機会,意欲の喚起につながる
 A縦の人間関係が育つ
 B子どもたちが自分の学習のビジョンを描くことができる
 C感動を共有する集団作りを可能にし,自己肯定感を培う
 D教師の力量形成につながる
(2)課題
 @交流の場・時間の確保
 A同年齢・同学年での子どもの共通体験の差
 B小学校と中学校が同じ学習教材を取りあげる場合のねらいや評価基準の違い

5.終わりに
 これまで取り組んできたこと学んだことをもとに,附属桃山地区学校園はさらなる教育研究活動の充実を図っていきます。平成23年2月18日には,附属桃山地区学校園研究発表会を開催し,皆様方からのご助言ご指導をいただきたいと考えております。研究発表会に多数のご参加をお願いいたします。