日本生活科・総合的学習教育学会全国大会 研究発表会に参加しました

 平成22年6月26日(土)・27日(日)に京都市を会場に日本生活科・総合的学習教育学会第19回全国大会が開催されました。本校も、26日(土)に総合的な学習(MET・ION・共通必修)の授業を全国から来られる先生方に公開しました。1年「留学生との交流会」、2年「職場体験事前学習」、2・3年「MET登録ガイダンス」、3年「ION 自分のWebページをつくろう」の授業を参観していただきました。研究発表会当日の様子はこちらをご覧下さい。

 本校の「総合的な学習の時間」について、その構想や特色について、大会研究冊子より抜粋し紹介します。

1.はじめに
 本校(京都教育大学附属桃山中学校)は、京都市の南端に位置しており、生徒は京都市・府内はもとより、大阪府、奈良県、滋賀県からも通学している。全校生徒数約400名、各学年4クラスの中規模校である。大学と共同した教育の実証的研究、大学がおこなう実地教育など教員養成に関する教育活動への協力、地域の教育への貢献など、公立校とはやや異なる性格を帯びた学校である。また1・2年生は特設方式、3年生は混合編成方式で各学年15名の帰国生徒を受け入れ、滞在国との教育事情の違いによるところの特別な指導とその実践的研究をおこなっていること、またそれに伴い特別な指導に関する研究の充実のため特別枠を設けて、日本語指導を必要とする外国人を若干名受け入れ試行していることも本校の特徴である。
 研究においては、教育目標の「豊かな感性をもち、周りと関わりながら自己を伸ばす生徒の育成」のもと、学習意欲を高め、確かな学力をつける指導方法の研究をおこなっている。また、隣接する附属幼稚園、附属桃山小学校との幼小中連携研究では、一人ひとりの子どもが自立と共生の力を併せもつ教育のあり方を模索し、それを実現する学びの一貫教育と、幼小中12年間を見通した学びの環境づくりに取り組んでいることも特徴である。

2.「総合的な学習の時間」の構想
 本校では、平成9年の教育課程審議会発表の中間まとめにもとづいて、総合的な学習の時間のねらい・意義を次のようにとらえ、本校の総合的な学習の時間を構想した。そして平成10年度より教育課程に総合的な学習の時間を位置づけて、現在までその実践を重ねている。

  • 主体的・創造的な課題解決能力としての自己学習力の育成
  • 学び方やものの考え方(情報の集め方、調べ方、まとめ方等)の習得
  • 教育課程の全体を通して身につけた知識や技能の総合力の育成教育課程の全体を通して身につけた知識や技能の総合力の育成

 これらのとらえ方を遂行するために、学年毎に学習を積み上げる学年進行型の学習<共通必修による学習>と、異学年混在型の学習<選択応用の学習=MET>の2つのアプローチを試みる総合的な学習を設定した。「学び」の内容と方法の両面から質的なレベルアップをめざすものである。 
 さらに、各学級週1時間、「コンピュータ操作の技能習熟を主とした学習」<ION>を週程表に位置づけており、<MET><共通必修><ION>を本校の総合的な学習の3本柱として設定した。

3.本校の総合的な学習の時間の特色
本校では、<MET><共通必修><ION>を総合的な学習の3本柱としている。本項ではそれぞれについて概要を説明する。
(1)MET
 MET〈メット〉 とは、Momoyama Explorers' Timeの略で、「桃山地域を探検する者の学習時間」を意味する。本校の総合的な学習の中心をなす教育活動である。体験的・応用的活動を時間をかけておこなう課題探求の時間で、コース選択型のグループ学習を基本としている。2学期の毎週水曜日の午後が活動時間で、オリエンテーションや全校MET発表会、振り返りなどを含めて全28時間を計画している。
 取り上げる内容は、これまでの本校の研究活動の成果をふまえて<環境><国際理解><福祉・健康>、そして平成22年度から内容に取り入れた<生き方>である。これらの領域は、これまで本校が大切にしてきた学習内容であるというだけでなく、教科を横断した学びができることはもとより、これらは答えがひとつではなく、さらに解き方もひとつでないところが総合的な学習の内容に値すると考える。各教員は4領域のいずれかに属する学習内容を題材として、コース設定をおこなう。教員数や使用教室を考え、毎年15コース程度を開設しているが、多彩なコース設定は、生徒の多様な学びの要請に応えうることができる。外部講師を招聘したり、校外の施設などの見学や学校周辺地域の調査など校外へ出ての学びも、多様な学びの環境として積極的に取り入れている。生徒たちは、教員が提示した各コースから自分が学びたいコースを選択する。各コースの定員はほぼ20名である。
 なお、METは、異学年混在型すなわち2年生と3年生が共に学習を進める学習形態としている。人と人が関わることの少ない現代において、他者から学ぶ、他者とともに学ぶという、生かし生かされということを大事にしたいとの考えによる。実際の学習では、各コースで数名ずつのグループを作り、チームとしてグループ毎に設定したテーマに基づき課題解決に向かう。チームのなかでまたグループ間でコミニュケーションを取り合い、また考えの異なる友だちと意見をすりあわせながら研究を進めるこの姿こそ、生きる力となりうると考えている。
 上述した領域や異学年混在型の考えは、本校METのコース設計のポイントとなるものである。これらを含め、本校のMETコース設計の視点は次のとおりである。
 @多様な「学習課題」「学習形態・集団」「学習方法」「指導体制」
 A体験的な学習
 B生徒による主体性
 C豊かな環境、教材・教具
さらに次の3点に配慮した活動を基本としている。
 @Active:生徒の主体的な体験活動を重視する
 ACollaborative:生徒同士の協働、協創的活動を重視する
 BCommunicative:報告・発表・討論の仕方などの活動を重視する

<留学生との交流会>


 METが終了する12月に、全校MET発表会をおこなう。全校生徒はもとより、保護者や大学からの参観者があるなかで、自分たちの1学期間の研究成果をコース毎に発表するのである。発表者は、聴き手に分かりやすくそして、興味をひく発表になるようにと考え、大勢の前でコースの代表として研究成果を披露する。聴き手は、他のコースがどのような活動や学びをしたのか知る機会となる。また質疑応答の時間を設定し、情報発信だけではなく、双方向の学びができるようにしている。なお、全体発表会に先立って、コース内でのグループ発表会を設定している。また全体発表会後には、コース毎にA3用紙1枚に研究内容をまとめた掲示物を作成させる。これらは、学習成果の共有を意図したものである。
 1年生は同時間帯に[PreMET]という名の学習を設定している。地元伏見をフィールドの中心として、課題設定の仕方や調査研究の仕方、研究成果のまとめ方など、課題解決学習の基礎を学ばせる。このような基礎を学ぶことで、2年生以降のMETに備えるだけでなく、教科学習にもいかせるようになる。〈 平成21年度のMET開設コースについては、
こちらを参照されたい。〉

(2)共通必修
 選択応用<MET>は縦割り異学年制、内容は体験的・応用的なものであるのに対して、共通必修は全員が履修する。学習内容は<環境><国際理解><福祉・健康><生き方>の領域で、現代的な課題や生徒の実態を考慮して出会わせたいもので、学年単位でおこなうことを基本としている。時間割設定の関係で、学習する学期に制約があるが、学活などと交換し、柔軟に対応している。

環境 (1年)琵琶湖と水 本校の設備から環境を学ぼう  (2年)京都議場書から学ぶ (3年)沖縄の自然 世界的な視野で環境問題を考える
国際理解 (1・2年)留学生との交流会  (3年)国際理解に関する講演・英国留学生との交流 沖縄の基地問題を考える
福祉・健康 (1年) アイマスク・車椅子体験 (3年)介助犬講演
生き方 (1年生)2年生から学ぶ、(2年)職場体験の事前事後指導、職場体験を後輩に伝える、(3年) 労働を守るルールを考える
※平成21年度当初の計画案


 教科および共通必修で学んだことをMETで発展的に学び直す、あるいはMETの学習成果や問題意識を教科および共通必修の学びに反映するといった双方向の学び合いが成立し、学習者が主体的に意志決定して学習を展開できることを期待するものである。

(3)ION
 ION〈イオン〉とは、<Information><Communication><Presentation>のそれぞれの単語の末尾をとって生まれた本校情報教育の呼称である。1年生では、ID取得やパスワードの設定という基本操作からコンピュータの基本的な機能(ワープロ、表計算など)の使い方、2年生ではワード・エクセルの活用に関する学習を、3年生ではインターネットを使った調べ学習やコンピュータを利用したプレゼンテーションの方法やホームページ作成の基礎を学ぶ。また情報モラルの学習も平成22年度より1・2年生でおこなう。
 本校では総合的な学習として取り上げる以前から、各教科でコンピュータを利用した学習をおこなっていたが、これらをより発展させるものとしてこの学習を設定した。またMETにどの領域にも属さないGWSという1つのセクションがあるが、このGWSは情報教育の成果における生徒の情報処理・活用能力をさらに伸ばす学習の場として位置づけられている。この意味からもIONは、その活用能力の基礎基本を学ぶ場として考えることができる。

4.総合的な学習の時間の内容見直しと共通確認
 平成24年度の新学習指導要領から、総合的な学習の時間数やねらいが改訂される。また本校で総合的な学習の時間が設定されてから何年も経ち、情勢の変化に伴い初期の約束事の改善が必要であったり、人事交流が頻繁になり共通認識事項が徹底しにくかったりしてきたことなどもあり、本校では平成20年度より総合的な学習の時間のあり方を再検討しはじめ、実施内容やねらいなどの見直しをはかってきた。その背景と具体策を次にあげる。
(ア)3本柱の内容および時間のわりふりの見直し
平成24年度から総合的な学習の時間が縮減されることになり、1年生:50時間、2・3年生:70時間となる。21年度より新指導要領の移行年度に入ること、また本校は22年度より平成24年度の教科時間数に併せることに決定したため、平成22年度からの時間数を下のように改編した。

(イ)本校の総合的な学習の時間についての共通確認とねらいの見直し
 多くの教員の入れ替わりや、教員の得意分野の拡大解釈により(本校では一時、得意分野をもとにコース設定できた)、学習内容が本校生徒に身につけさせたいものとなっているのかという反省もあり、新指導要領で提示されたねらいともあわせて、次のようにねらいを再確認した。

@ 地域や環境、国際理解、福祉・健康を視点にした学習をとおし、外の世界に目を向けたり自 分の身の回りを振り返る(1・2年)。→課題設定・解決する力、人と関わることに関する力
A 地域や環境、国際理解、福祉・健康を視点にした学習をとおし、地球市民としての立場・社会との関わりを考える(3年)。→課題設定・解決する力、人と関わることに関する力
B 見学・体験をとおして、将来の進路・生き方を考える。
C コミュニケーション力(人と関わりつつ、自分の力を最大限に発揮できる力)、情報収集し活用する能力を培う。


5.総合的な学習時間の今後の発展をめざして

<MET>

 本校では生徒自身による自己評価を基本に、コース担当者が所見を添えるかたちの自己評価票を作成している。また常にはMETノートを活用して、毎時間本時の学びや自己評価を記入させ、担当者はそれにひとことコメントを添え、学びや変容の把握をおこなっている。一方METは、学習課題に対して調査研究をおこない、内容を学ぶだけではなく、学び方を学ぶことにこそ意義がある。さらに本校のMETでは(@)課題を設定・解決する力 (A)情報を収集・活用する力 (B)人と関わることに関する力を身につけさせることもねらいとしている。しかしながら、何ができたのか、何がわかったのかなど、はかることのできる学習成果に教員も生徒も意識がいきがちなことは否めない。「各コース担当者がねらいを達成させるべく、それについてどれ位学習活動にしかけをしているのか」を共通認識することが必要との考えを強くしている。そこで平成21年度からは、各コースの設計視点を交流する目的で、一覧表にして提示することを始めた。これによりコース毎の設計視点を交流できるようになったことはもとより、コース担当者も意識したコース設定、ねらいを常に意識した学習を進めることができるという一挙両得の意義が確認できた。
 新学習指導要領では、「生きる力」として言語活動の充実、知識の総合性、協同する力などをうたっているが、本校の「総合的な学習」はこれらに十分寄与するものと考えている。充実させていきたい。

参考文献 1997 附属桃山中学校研究論集
       1998 附属桃山中学校研究発表論集

当日の公開授業指導案はこちらをご覧下さい。